第10章 離婚しないなら、裁判所で会おう

長谷川栞は眉をひそめた。受話器の向こうの瑠奈も、さっきの中野航平の怒鳴り声を聞いたに違いない。

反射的に通話を切る。

電話が切れたのを見て、航平の機嫌はさらに悪くなった。

――誰と話してた?

目の前に投げつけられた離婚協議書を見ても、栞の心は不思議なくらい凪いでいた。

「……サイン、したの?」

まるで「ご飯食べた?」とでも聞くみたいに、表情も声も落ち着き払っている。

航平の眉間がぴくりと跳ねた。怒っているのか、呆れて笑いそうなのか、自分でも分からない顔で言い返す。

「お前……蓮を捨てる気か? 十月十日かけて産んだ息子だぞ」

「うん。捨てる」

栞は顎を上げ、航平をまっすぐ見...

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